税制優遇とは?
設備投資において、補助金で取得費の一部を賄うのと、税制優遇で税負担を軽くするのとは別の話です。補助金は採択されなければ1円も入りませんが、税制優遇は要件を満たせば必ず適用されます。採否に左右されないという点で、投資計画の土台としてはむしろ確実性が高い手段です。
その税制優遇を使うために必要なのが計画認定です。本ページでは経営力向上計画と先端設備等導入計画の2制度を取り上げます。いずれも中小企業等経営強化法に基づく制度ですが、軽くなる税目が違います。経営力向上計画は法人税(即時償却・税額控除)、先端設備等導入計画は固定資産税です。したがってこの2つは選択関係ではなく、組み合わせて検討するものです。
そのうえで、最も重要な点を先に申し上げます。両制度とも、設備を取得する前に認定を受けるのが原則です。購入後にご相談いただいても、打てる手は限られます。
2つの計画で使える税制
それぞれの計画で使える税制措置を整理しました。
| 項目 | 経営力向上計画 | 先端設備等導入計画 |
|---|---|---|
| 軽くなる税目 | 法人税・所得税 | 固定資産税(償却資産) |
| 税制の名称 | 中小企業経営強化税制 | 固定資産税の課税標準の特例 |
| 優遇の内容 | 即時償却または税額控除10% (資本金3,000万円超の法人は7%) |
課税標準を3年間1/2、または 5年間1/4に軽減 |
| 認定する機関 | 事業所管大臣(国) | 設備を導入する市区町村 |
| 設備の取得期限 | 令和9年3月31日 | 令和9年3月31日 |
どのくらい軽くなるか(金額の目安)
設備投資額に対して、おおよそどの程度の効果になるかの目安です。
| 設備投資額 | 経営力向上計画 税額控除(10%) |
経営力向上計画 即時償却(初年度) |
先端設備等導入計画 固定資産税(5年間1/4) |
|---|---|---|---|
| 1,000万円 | 約100万円 | 約300万円 | 約30万円 |
| 3,000万円 | 約300万円 | 約900万円 | 約90万円 |
| 5,000万円 | 約500万円 | 約1,500万円 | 約150万円 |
| 1億円 | 約1,000万円 | 約3,000万円 | 約300万円 |
法人実効税率30%・耐用年数10年の設備を想定した概算です。即時償却の額は初年度の税負担が軽くなる分であり、通算の減税額ではありません(後述)。固定資産税を3年間1/2で受ける場合は、上表のおおむね半分が目安です。実際の金額は資本金規模・利益水準・耐用年数・自治体によって変わります。
ご覧のとおり、金額の桁は設備投資額に比例します。数千万円規模の投資であれば、税制優遇だけで数百万円単位の効果になり、補助金と並ぶ検討価値があります。
節税シミュレーターで、自社の金額を確認できます
投資額などを入力すると、経営力向上計画・先端設備等導入計画それぞれの節税額を試算できます。登録不要でその場でご確認いただけます。
あわせて、補助金審査での加点対象になるかも整理しておきます。
| 補助金 | 経営力向上計画 | 先端設備等 導入計画 |
|---|---|---|
| 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 | − | − |
| 事業承継・M&A補助金 | ○ | ○ |
| 大規模成長投資補助金 | − | − |
| 中小企業省力化投資補助金(一般型) | − | − |
| 中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型) | 制度なし | 制度なし |
| 中小企業成長加速化補助金 | − | − |
| デジタル化・AI導入補助金 | − | − |
| 小規模事業者持続化補助金 | ○ | − |
○=加点の対象となります/−=加点の対象ではありません/制度なし=その補助金には加点項目という仕組み自体がありません
事業承継・M&A補助金の加点事由は「経営力向上計画の認定、経営革新計画の承認、又は先端設備等導入計画の認定のいずれか」という形で定められています。3つのうち1つを満たせば同じ加点が得られるため、税制優遇とあわせて価値のある計画を選ぶのが合理的です。経営力向上計画か先端設備等導入計画を選べば、加点と税制の両方を取れます。
税制が本体、加点は副産物です
加点対応表のとおり、この2つの計画が加点として効く場面は限られています。それでも取得する価値があるのは、税制優遇そのものが目的として成立するからです。設備投資に対する即時償却や、固定資産税を5年間1/4に抑える効果は、加点1項目とは比較にならない規模になります。加点は副産物と捉えてください。
2つの計画の要件と効果
経営力向上計画(中小企業経営強化税制)
認定を行うのは事業所管大臣で、業種によって申請先の省庁が変わります。計画自体の対象は従業員2,000人以下と幅広い一方、税制措置を使えるのは資本金1億円以下等の中小企業者に限られます。計画期間は3年・4年・5年から選び、労働生産性について次の伸び率が求められます。
| 計画期間 | 労働生産性の伸び率(年平均) |
|---|---|
| 3年計画 | 1%以上 |
| 4年計画 | 1.5%以上 |
| 5年計画 | 2%以上 |
経営革新計画(付加価値額の伸び率が3年計画で9%以上)と比べると要求水準は緩やかです。数値要件で断念するケースは多くありません。
税制の内容は即時償却または取得価額の10%の税額控除(資本金3,000万円超の法人は7%)の選択適用です。対象設備は類型ごとに手続きが分かれます。
| 類型 | 要件の概要 | 必要な確認書類 |
|---|---|---|
| A類型 生産性向上設備 |
生産性が年平均1%以上向上する設備。販売開始からの経過年数に制限あり | 工業会等の証明書 |
| B類型 収益力強化設備 |
投資利益率7%以上の投資計画に係る設備 | 経済産業局の確認書 |
| D類型 経営資源集約化設備 |
M&A後の修正ROA等の改善に資する設備 | 経済産業局の確認書 |
| E類型 経営規模拡大設備等 |
売上高100億円超を目指す計画。建物が対象になる唯一の類型 | 経済産業局の確認書 |
最低取得価額は機械装置160万円、工具・器具備品40万円、建物附属設備60万円、ソフトウェア70万円です。なおC類型(デジタル化設備)は廃止済みで、現在は使えません。
類型選びは実務上の分岐点です。A類型は工業会証明書を取るだけで済む反面、対象設備が限定されます。B類型は投資利益率7%を満たす計画を作れば設備の自由度が上がりますが、経済産業局の確認に時間を要します。設備が決まっている案件ではA類型を先に当たり、該当しなければB類型に切り替えるのが定石です。
先端設備等導入計画(固定資産税の特例)
こちらの認定主体は市区町村です。国ではなく、設備を設置する自治体に申請します。労働生産性が年平均3%以上向上する計画であることが要件で、固定資産税特例を使う設備は投資利益率5%以上の投資計画に位置づける必要があります。
軽減の内容は賃上げ方針の表明とセットで決まります。
| 従業員に表明する賃上げ方針 | 課税標準 | 軽減期間 |
|---|---|---|
| 給与等支給額の増加率1.5%以上 | 1/2 | 3年間 |
| 給与等支給額の増加率3.0%以上 | 1/4 | 5年間 |
賃上げ方針を表明しない場合、税制措置の対象になりません。従来は表明なしでも軽減を受けられましたが、現在は必須要件です。ここを見落とすと、認定を受けても税負担が変わりません。
対象設備は機械装置160万円、測定工具・検査工具30万円、器具備品30万円、建物附属設備60万円が下限で、ソフトウェアは対象外です。経営強化税制とは下限額も対象範囲も異なる点にご注意ください。
前提としてもう一点。この制度は市区町村が導入促進基本計画を策定していなければ使えません。未策定の自治体では申請自体ができず、策定済みでも対象業種や設備が限定されている場合があります。設備の設置場所が決まった時点で、その自治体の計画内容を確認する必要があります。
節税額のシミュレーション
会社の情報と導入予定の設備を入力すると、2つの計画それぞれの節税額の概算が出ます。決算月から逆算した進め方の目安も表示されます。
簡易計算による概算です。実際の節税額は設備の種類・耐用年数・各社の税負担の状況によって変わります。正確な金額は顧問税理士にご確認ください。
認定までの流れと期間
両制度に共通する原則は認定を受けてから設備を取得するという順序です。ここを外すと、税制優遇そのものが使えません。
経営力向上計画の流れ
類型に応じた確認書類(工業会証明書または経済産業局の確認書)を取得したうえで計画を申請し、認定を受けてから設備を取得します。標準処理期間は約30日、複数省庁にまたがる場合は約45日です。確認書類の取得にも別途時間がかかるため、証明書の手配から逆算してください。
設備を先に取得してしまった場合の例外として、取得日から60日以内に申請書が到達し、かつ取得した事業年度内に認定を受ければ間に合う扱いがあります。ただしD類型・E類型にこの例外はありません。取得後に気づいた場合は、まず経過日数と類型をご確認ください。
先端設備等導入計画の流れ
認定経営革新等支援機関の確認書が必須です。確認書を得たうえで市区町村に申請し、認定後に設備を取得します。こちらに60日以内の例外はなく、取得前の認定が絶対条件です。審査期間は自治体ごとに異なるため、管轄窓口にご確認ください。
発注・契約の前にご相談ください
税制優遇を逃す最大の原因は、制度を知らなかったことではなく順序を誤ったことです。設備の発注や契約を済ませてからご相談いただいた案件では、打てる手が限られます。両制度とも設備の取得期限は令和9年3月31日ですが、期限に間に合えばよいという話ではありません。投資を検討し始めた段階、遅くとも発注前にご相談ください。当センターでは初回相談の段階で、発注予定日から逆算して間に合う制度と間に合わない制度を切り分けてご説明しています。
よくある誤解と注意点
誤解①:即時償却は減税である
即時償却は税額を減らす措置ではなく、本来数年かけて計上する減価償却費を初年度にまとめて計上する制度です。課税の繰延べであり、通算の税負担が減るわけではありません。一方の税額控除は、税額そのものが減ります。
したがって、目先のキャッシュフローを優先するなら即時償却、通算の税負担を抑えるなら税額控除という判断になります。どちらが有利かは利益計画によって変わります。顧問税理士と試算したうえで選択してください。
誤解②:2つの計画はどちらか一方を選ぶもの
軽くなる税目が異なるため、両方を取得する選択肢があります。法人税で即時償却を使いつつ、同じ設備で固定資産税の軽減も受けるという組み立てです。ただし要件も申請先も別々であり、書類は二本立てになります。手間に見合うかは投資規模次第です。
誤解③:補助金と税制はセットで自動的に使える
補助金を受けて取得した設備に税制優遇を適用する場合、取扱いに個別の確認が必要です。圧縮記帳を適用すると税務上の取得価額が変わるため、想定した控除額にならないことがあります。補助金と税制を併用する計画では、この点を事前に整理しておく必要があります。
注意点:適用期限と改正
両制度とも設備の取得期限は令和9年3月31日です。また税制の要件は改正が頻繁で、C類型の廃止、賃上げ表明の必須化、工具・器具備品の下限額引上げなど、直近でも変更が続いています。着手時点で最新の要件をご確認ください。
補助金情報センターのご支援
補助金情報センターでは、補助金の申請支援とあわせて、税制優遇を受けるための計画認定をご支援しています。設備投資の意思決定と同じタイミングで税制を組み込む点が特徴です。
- 使える税制の判定:ご計画の設備がどの類型に該当するか、固定資産税特例の対象になるかを確認し、取得すべき計画を絞り込みます
- 即時償却と税額控除の比較:利益計画をもとに、どちらが自社に有利かを試算のうえご提示します。おおまかな金額は節税シミュレーターでもご確認いただけます
- 確認書類の手配:工業会証明書・経済産業局の確認書・支援機関確認書について、必要なものを特定し取得までを支援します。当社は認定経営革新等支援機関です
- 自治体要件の確認:設置先の市区町村が導入促進基本計画を策定しているか、対象業種・設備に該当するかを確認します
- スケジュールの逆算:発注・納品の予定から逆算し、認定が間に合う工程表をご提示します
- 補助金との組み合わせ:補助金申請と計画認定を一体で設計し、加点と税制の両取りが可能な場合はその形をご提案します
認定経営革新等支援機関として、補助金・計画認定・融資までを一体でご相談いただけます。
税制優遇は、設備を取得してからでは間に合いません。早期相談が採択の鍵です。
設備を発注してからでは、間に合いません。
ご計画の設備でどの税制が使えるか。認定は発注予定に間に合うのか。この2点の切り分けから、無料でご相談いただけます。
お電話でのお問い合わせ 03-6825-0432